【ハノイ生活のはじまり】 Hanoi Rhapsody:001

Hanoi

狂詩曲

“自由奔放な形式で民族的または叙事的な内容を表現した楽曲”
いろんなフルーツを一つの鍋に入れて掻き回したような匂いが、暑さと湿気に漂っている感覚に少しめまいを覚える。
日本にやってきた外国人が、「醤油のにおいがする」という感覚はこういうことなのだろうとパスポートを手に一人でぼんやりと入国審査の列に並んだ。
ハノイに来るのは、これが2度目だ。
1度目は2年ほど前になるだろうか、まだ、学生の時だった。大学を卒業して、写真をやると決意したものの右も左もわからなかったので、海外フィールドワークの経験ができる専門学校に入学した。
学校を卒業後、就活がうまく行かずバイト暮らしをしてやりくりしていたが、そこに思いがけず、今回の仕事のチャンスが巡ってきた。
「ベトナムで雑誌のカメラマンを探しているんだけど、興味ない?」
学生の頃に、授業の一環で講義にゲストとして来てくれていた編集者の方からだった。
ここから、私のベトナム生活が始まった。

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